インハウスローヤーは私を妻にして専務になりたいだけ ~なのに待っていたのは溺愛でした~
私も、あの御屋敷では息が詰まる。父が決めたのなら、妹も口を出すまい。

救われた。

そう思い、ここへ引っ越してきたのは昨日。土曜だったこともあり、すぐに義貴さんも引っ越してきて、二人暮らしを始めた。備え付けの家具があり、すぐに生活をすることができたのだ。

義貴さんは何でもできる人だ。昨夜は夕飯を、今朝は朝食を作ってくれた。料理などしたことのなかった私は、せめて皿洗いを申し出た。

そうやって、適宜家事を分担していくのだろう、と思っていたが、その他の家事はハウスキーパーに任せたらいいと義貴さんに言われてしまった。
食事を作るのは、義貴さんの趣味らしい。

「楓さん、婚約してすぐで申し訳ないのだけれど、今夜から出張なんだ」

今朝の朝食、出来たてのスクランブルエッグを口に運びながら、私は彼の言葉に顔を上げた。

「今夜から、ですか?」

目の前で、義貴さんは申し訳無さそうに眉を八の字にする。

「ああ。イギリスで大きな案件を抱えていてね。夕飯はどうしよう、ハウスキーパーに夕飯も手配しておこうか?」
「いえ、大丈夫です。自分でできますから」
「そう」

義貴さんはそう言うと、さっさと食べ終えて部屋に行ってしまった。
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