インハウスローヤーは私を妻にして専務になりたいだけ ~なのに待っていたのは溺愛でした~
私たちの住まいは、二人で住むには広すぎる。

昨日、部屋割りをしていると、私名義の部屋だからと、マスターベッドルームは私が使うことになった。そして、その隣のゲストルームに、義貴さんは〝自分の部屋〟を作った。

リビングやダイニング、キッチンは共用だが、義貴さんは食事以外は部屋から余り出てこない。彼はインハウスローヤー――企業内弁護士だ。法務部長であるし、食事中も常に何か難しい資料を見ていたりするから、とても忙しい人なのだと思う。

私も一人、マスターベッドルームに戻る。ここにあるのは大きすぎるベッドと、大きすぎる机にソファ。二人どころか三人でも余裕で暮らせそうな広さだ。
ベッドに腰掛け、そのまま背中をマットレスに預けた。天井を見つめ、ため息をこぼす。

妹の視線を気にせず住んでいられるのは、気を張りっぱなしだった椎葉の御屋敷での暮らしとは比べ物にならないほど気が楽だ。

けれど、寂しさがある。でも、生い立ちを考えたら、私はそんなに欲張ってはいけない人間なのかもしれない、とも思う。

何をするでもなく、今日が過ぎてゆく。

昼食後に義貴さんは出ていった。私は一人ぼっちで夕飯を食べながら、何度もため息を零した。
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