インハウスローヤーは私を妻にして専務になりたいだけ ~なのに待っていたのは溺愛でした~
あ……。

私は、やっと気付いた。
私が彼に婚約を申し込んだのは、専務になりたいからなのだ、と。

「楓さん、あなた、出世の道具にされているのよ。結婚するってことは、この先ずっと一緒にいるってこと。それなのに、そんな人で――」
「いいんです、私は」

私は愛されなどしない。
私を救ってくれたあの人を、悪魔と呪ったあの日から、神様が私の運命を愛なきものに変えたのだと思う。

これはきっと、不義理な私への、神様からの罰。

『愛されずに結婚し、愛されずに生涯を終えなさい』

神様の声が、脳内で響いた。

「楓さん……」

心配そうにこちらを見る先輩に、にっと笑ってみせる。先輩はいっそう眉をひそめたけれど、私は「仕事に戻りますね」と、会議室を後にした。
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