インハウスローヤーは私を妻にして専務になりたいだけ ~なのに待っていたのは溺愛でした~
帰宅し、真っ暗な部屋の明かりをつける。ハウスキーパーさんが作っておいてくれた夕飯を温め、一人でダイニングで食べながら、今日何度目になるか分からないため息をこぼした。

私は愛されない。その資格もない。
なのに、この婚約に救われたと喜び、何かに期待していたんだ。

シャワーを浴び、大きすぎる寝室のベッドに横になる。
窓の外は雨が降っている。大粒のそれは窓を叩きつけ私の気持ちを一層沈ませた。

最初から、義貴さんは寝室を別に作った。
けれど、この大きすぎるベッドは、おそらく一人用じゃない。

私たちは婚約して、夫婦になる。なのに、部屋を別にした。
その意味することは――。

良く考えれば、分かることだったのに。

目の奥がツンとして、思わず指で目元を拭った。
私には、きっと泣く資格もない。ただ今を、道具としてでも必要としてくれる彼のために生きなければ。

ならば、私の役割は――。

愛のない結婚でも、彼の役に立ちたいと思った。それが、あの人を悪魔と呪ってしまった私の、せめてもの贖罪(しょくざい)だ。

彼が専務になることだけでも叶えたい。
私は婚約破棄も、離婚もしない。どうか、優しい笑顔の彼が、無事専務になれますように。

窓に背を向け、大きすぎるベッドに縮こまり、一人目を閉じる。
窓の外、ツインタワーのもう一つの塔の最上階の明かりが灯っていることに、私は気づかなかった。
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