インハウスローヤーは私を妻にして専務になりたいだけ ~なのに待っていたのは溺愛でした~
「あれ、怖がらせるようなことしちゃったかなぁ」
凱晴さんの笑い声が聞こえる。それすら私には怖くて、早々に会釈を返し、会社へ行こうと足を踏み出した。
「お姉様は? 婚約したっていうのに、挨拶のひとつもないのかしら? ああ、――」
思わず立ち止まり、振り返る。姉も凱晴さんも、含みのある笑みを浮かべていた。
「――お相手が愛のない〝冷徹サイボーグ〟だものね。婚約をしたのに愛されないなんて、お姉様が可哀想だわ」
言葉と表情が一致していない。妹の言葉に、愚かな私をあざ笑うかのような笑みに、私の胸はドクリと嫌な音を立てた。
「そろそろ行かないと遅れてしまうよ、渚紗」
「ええ、そうね」
「それではまた。これからも末永くよろしくお願いしますよ、お姉さん」
凱晴さんが渚紗の腰を抱き、渚紗はそんな彼に寄り添う。どこからどう見ても、お似合いな美女美男カップルは、動けなくなった私の横をすり抜けるように去って行く。
爽やかな晴れ渡る朝、私の心は正反対にどんどんと曇っていった。
凱晴さんの笑い声が聞こえる。それすら私には怖くて、早々に会釈を返し、会社へ行こうと足を踏み出した。
「お姉様は? 婚約したっていうのに、挨拶のひとつもないのかしら? ああ、――」
思わず立ち止まり、振り返る。姉も凱晴さんも、含みのある笑みを浮かべていた。
「――お相手が愛のない〝冷徹サイボーグ〟だものね。婚約をしたのに愛されないなんて、お姉様が可哀想だわ」
言葉と表情が一致していない。妹の言葉に、愚かな私をあざ笑うかのような笑みに、私の胸はドクリと嫌な音を立てた。
「そろそろ行かないと遅れてしまうよ、渚紗」
「ええ、そうね」
「それではまた。これからも末永くよろしくお願いしますよ、お姉さん」
凱晴さんが渚紗の腰を抱き、渚紗はそんな彼に寄り添う。どこからどう見ても、お似合いな美女美男カップルは、動けなくなった私の横をすり抜けるように去って行く。
爽やかな晴れ渡る朝、私の心は正反対にどんどんと曇っていった。