インハウスローヤーは私を妻にして専務になりたいだけ ~なのに待っていたのは溺愛でした~
その日、いつものように業務をこなし帰宅したが、心の中は焦りでいっぱいだった。今日、社長に言われたことが、胸に重くのしかかっていたのだ。

――『先に世継ぎを残した者を、専務として認める』。

世継ぎなんて、愛のない婚約をした私たちには不利だ。
もしかして、渚紗はこのことも知っていて、だから今朝あんなことを――?

今日も一人きりの部屋で夕食をダイニングに並べる。けれど、どれも喉を通らない。
あの人を悪魔と呪ったあの日、神様は私の周りの人の幸せまでを奪うことにしたのかもしれない。私は、彼を専務にしてあげることもできないらしい。

喉を通らなくては食事にならない。早々に夕飯を切り上げ、食べられなかったものをくずかごに放った。皿を洗い、シャワーを浴びて、早々にベッドに横になった。
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