インハウスローヤーは私を妻にして専務になりたいだけ ~なのに待っていたのは溺愛でした~
しばらくして何とか泣き止み、そっと顔を上げる。

「あ、あの……ごめんなさい、もう平気、ですから」
「俺が大丈夫じゃない。夕飯だって食べていなんだろう?」

くずかご、見られちゃったんだ。

「ごめんなさい……」
「いや、謝るのは俺の方だ。あなたに、寂しい想いをさせた」
「違います!」

寂しいからじゃない。
私が泣いていたのは――

「幸せを求めてしまう、愚かな自分が嫌だったんです。私は、幸せになる資格なんてない人間なのに」
「なぜそう思う?」
「え……」

見上げると、暗がりの中、一昨日と同じ優しい瞳が私を見降ろしていた。

「幸せになるのに資格なんかいらないだろう。それに、私はあなたに幸せになってもらいたい」
「どうして……?」
「幸せなあなたを、見たいからだ」

ドクン、と、胸が一度大きく鳴って、それがすぐに乱れたリズムを刻み出す。
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