インハウスローヤーは私を妻にして専務になりたいだけ ~なのに待っていたのは溺愛でした~
3 幸せになる資格と愛の代償
「あなたはこれから先、一生涯共にいる相手だ。大切にしたいと思うのは、通常のことだろう」

思わずキョトンとしてしまった私に、義貴さんは優しく目を細める。じっと、私を見つめ続けたまま。

恥ずかしくなって、顔をそらせてしまった。頬が熱い。胸が苦しい。こんな気持ちに、なるなんて。

この人は、私が思っているよりも、ずっとずっと先を見ていた。たとえ私に恋心が無かったとしても、この人は愛情にあふれた人だ。
〝冷徹サイボーグ〟なんていう噂を本気にして、目の前の彼のことをきちんと見ていなかった自分が恥ずかしい。

「ごめんなさい」

呟くように言うと、彼はまた私を優しく包んでくれた。彼の胸におでこがぶつかる。この優しくて男らしい香り、好きかもしれない。

「謝らないでくれ。私にも非があるのは明白だ。婚約したばかりで、互いのことをろくに話すこともせずに、すぐに出張に飛んでしまった私が悪い」
「お仕事ですから。義貴さんは、悪くないです」
「なら、あなたも悪くない」
「……ごめんなさい」
「だから、謝るなと言っただろう」

そう言う彼の声色が柔らかくて、安堵と安心に包まれる。思わず彼に身を寄せるように体重をかけてしまうと、彼はふっと優しい笑いを零した。

「楓さん、今から少し話そうか。私たちのこと。これからのこと。私たちには、それが欠如しているようだから」

顔を上げた先で、義貴さんが思った通りの優しい笑みを浮かべている。
私は「はい」と答えると、義貴さんに連れられダイニングへ向かった。
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