インハウスローヤーは私を妻にして専務になりたいだけ ~なのに待っていたのは溺愛でした~
「私は、別に……」
「いいなぁ、君みたいな気の強そうな女を、自分の手で泣かせるのってそそる」

ギラリと笑んだその顔に、渚紗は恐怖を覚えた。
けれど、あんな姉なんかに負けたくない、自分の方が勝っているという気持ちが、この状況を受け入れさせるを得ない。

「抱いて。ただ、それだけ」

睨むように見つめれば、凱晴は渚紗の首元に手をやった。

「仰せのままに」

突然、処女を貫かれた。容赦ない抽挿に、痛みばかりを感じて苦しい。

「ごめんなさい、やっぱり止めて!」
「止めろだって? いいね、君の泣く姿。乞う姿。素敵だ」

言いながら、凱晴は渚紗の首にやった手に力を込める。息ができない。勝手に涙が溢れだす。
違う、こんなの――。

そう思いながらも、渚紗は自分が上手く誘えなかったことがいけなかったのかもしれないと思う。それとも、これがセックスのありかたなのか。渚紗は、正しい男女の在り方を知らない。
それに――。

――私は、アイツ()には負けない。

その思いだけが、ただ下腹部を貫かれる痛みと胸の痛みを抑えてくれる。
渚紗は涙目になりながら、それでもやっぱりどこか勝ち誇った気持ちで、窓の向こうのもう一方のタワーレジデンスの最上階を見ていた。
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