インハウスローヤーは私を妻にして専務になりたいだけ ~なのに待っていたのは溺愛でした~
アフタヌーンティーを堪能した私たちは、博物館を後にした。その頃は夕日が傾きかけていたのだけれど、都心に戻ってくるころには空は藍色に染まっていた。

「London bridge is falling down,ふんふんふん~♪」

高速道路を走る義貴さんの車の中。束の間の里帰りをしたみたいな、懐かしい気持ちになって、つい子供の頃によく口ずさんでいた曲を歌ってしまった。

この歌を最後に歌ったのは、ウェストミンスター橋でのあの事故の直前だ。悲しくなるから、歌えなかった。けれど、今、自然に口ずさんでしまった。

きっと、あの事故の記憶を乗り越えられてしまうくらい、今、私は幸せなのだと思う。

懐かしい記憶、優しい家族の話をした私の為に、今日のデートをプランニングしてくれた義貴さんの想いを、胸に刻むようにしかと受け止める。

どうしよう、それだけで胸がいっぱいだ。
< 41 / 70 >

この作品をシェア

pagetop