インハウスローヤーは私を妻にして専務になりたいだけ ~なのに待っていたのは溺愛でした~
「楓さん、夕飯どうしようか?」
「あー……」

幸せに浸っていると不意に義貴さんに訊かれ、私は口ごもってしまった。

アフタヌーンティーを堪能したから、お腹はそんなに空いていない。スコーンやスイーツだけでなく、サンドイッチも盛られたそれを、時間をかけてゆっくり頂いたのだ。

「あんまりお腹空いていないよね。実は、私も」

義貴さんは前を向いたまま、クスクス笑う。

「はい、実は」

答えれば、そうだよね、と、義貴さんは肩を揺らす。

「すみません」
「いや、謝ることないよ。そもそも誘ったのは私の方だ」

そう、義貴さんは私のために、アフタヌーンティーに連れていってくれたのだ。だったら、今度は私が、義貴さんのことを知りたい。

「あの――」
「なんだい?」
「私、義貴さんが良く行くお店に行ってみたいです。その、軽く何か食べられそうな」

すると、義貴さんは目をぱちくりさせる。けれどすぐに「分かった」と微笑んで、車は高速を降りていった。
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