インハウスローヤーは私を妻にして専務になりたいだけ ~なのに待っていたのは溺愛でした~
何とか牛丼を咀嚼し喉の奥に押し込めて、食べ終わった後に帰宅した。

「お腹いっぱいだった? 無理しなくても良かったのに」

お店の中で義貴さんはそう言ったけれど、私は首を横に振った。

「いえ、あの、美味しかったです……」
「本当、義貴は乙女心が分かってないな〜」

飯野さんは義貴さんの背中を叩きながら、「イギリスで助けた少女に嫉妬してるんだよ」と二カッと笑った。だから私もそういうことにして、苦笑いを浮かべ帰ってきた。

けれど。

「今日はありがとうございました、お休みなさい」

そう言って、私はすぐにベッドルームに入った。

「楓さん、お茶でも――」
「いえ、すみません。少し、車に酔ってしまったみたいで」
「そう」

引き止めてくれた彼を断って、暗がりの部屋の中で広すぎるベッドに横になった。
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