インハウスローヤーは私を妻にして専務になりたいだけ ~なのに待っていたのは溺愛でした~

義貴 side

 ◆

[14年前の事件、被害者の身元調べられないか?]

義貴は楓の部屋を出てすぐ、飯野にメッセージを送った。自分の部屋に籠もり、昨夜の想像とはかけ離れた現実を目の前に大きなため息を零す。

今頃は彼女の部屋で仲睦まじく過ごしていると思っていた。もちろん、専務になる気など更々ない。求められれば、なればいいこと。

それでも、彼女に触れ、彼女を抱きたいと思った。今日のデートはそういう算段もあった。
計算通りにならないというのは良くあることで、交渉も同じこと。けれど、彼女のこととなるとおかしいくらいに感情が乱れる。

[何で俺がまた]
[全ての元凶がお前だと判断したからだ]
[は?]

楓は嫉妬などするような(ひと)じゃない。嫉妬心に駆られるなら、彼女は既に妹につぶされていると義貴は思った。それでも彼女は生きている。

と、いうことは。
もしかしたら、彼女のパンドラの箱を開けてしまったのかもしれない。もとい、開けたのはアイツの方だが。

義貴は頭を抱えながら、タブレット端末であの日の新聞記事を探す。

14年前、ロンドン、ウエストミンスター橋の上。
義貴は必死に探す。あの日助けた彼女は、一体誰だったのだろうか――。
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