インハウスローヤーは私を妻にして専務になりたいだけ ~なのに待っていたのは溺愛でした~
「私たちは、互いのことをちゃんと知らないといけない。婚約するということは、そういうことだったんだ。けれど、私のエゴで全てをすっ飛ばしてしまった。大切にしたいと言っておきながら、あなたのことを何も知らなかった。どうか、許して欲しい」

「義貴さん……、ごめんなさい」

彼の言葉には、きちんと向き合いたいという誠意が伝わってくる。けれど、私は今、助けてくれた人をずっと恨んでいたという愚かな自分を彼に知られるのが怖い。
幻滅され、独りぼっちにされてしまうのが怖い。

あなたの隣で楽しかったあの幸せが、不幸に変わってしまうのが、怖い。

ついに、涙が溢れ出してしまった。

「楓さん、ゆっくり話すよ。だからどうか、聞いて欲しい。私の、エゴのような、あなたへの想い」

義貴さんは泣き出した私に触れず、ただ静かに話し出した。
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