インハウスローヤーは私を妻にして専務になりたいだけ ~なのに待っていたのは溺愛でした~
「14年前の事故の時に、あなたを助けたのは私だ。ただ、夢中だった。思わず叫んだ日本語が通じなくて、焦って、だったら手を出した方が早いと、あなたを抱きしめかばったんだ。けれど、あなたの父親が巻き込まれたのまでは救えなかった。

私はずっと、あの日のことを後悔している。同じ人間なのに、言葉が通じなければ気づけることにも気づけない、と。それから、私は法学を学びながら、独自に語学を学んだ。今はそのおかげもあり、世界中を駆け巡るこの仕事に就けたのだけれど」

義貴さんの声は、柔らかい。彼の後悔と、私の重い過去が重なる。余計に涙が溢れ出してしまった。

「あなたのことを意識し始めたのは、本当に書類のことだったんだ。頼んだ書類を、最速で、しかも誤字なく丁寧に仕上げるあなたの仕事を見て、どんな子だろうと思っていた。社長の娘だと知って驚いた」

「私は、娘なんかじゃ……」
「そうだね。そのことを知ったのも、そのすぐ後だったんだ。あなたは本当の娘じゃない。だから、妹に強く当たられている――」
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