インハウスローヤーは私を妻にして専務になりたいだけ ~なのに待っていたのは溺愛でした~
義貴さんは、私と妹のいびつな関係を目撃していた。

二年前、会社の奥ばった場所にある給湯室内。バレンタインデーに義理のチョコレートを配ろうとした私に、妹が「そんなの誰も嬉しくない」「呪われる」「死神」と立て続けに暴言を吐き、全てを捨てるよう忠告していたのを、見られていたのだ。

「あなたは怯えた顔をしながら、でも最後には『そうだよね、誰も嬉しくないね』と無理やりに微笑んで――なんて強い子なんだと思った。泣きながら、チョコレートを捨てていたあなたを忘れられなかった。くずかごから、それを拾って持ち帰ったくらいだ」
「え……」

「気づけば目で追っていた。あなたは気づかなかったかもしれないが、いつも私はあなたを見ていた。妹が近づくたびに怯え、それでも『大丈夫』と健気に笑うあなたを――いつしか、私が守りたいと思うようになった」

義貴さんの言葉が嘘じゃないのは、彼の目を見れば分かる。そんなに前から、私のことを気にかけていてくれていたんだ、私を守ろうとしていてくれていたんだ。

苦しい。そんなあなたを、ずっと恨んでいた自分の小ささと愚かさに、心がつぶされてしまいそうだ。

「この気持ちは全部私のエゴだ。あなたを救いたいと思ったのも、あなたを守りたいと思ったのも。だから、あなたが苦しいのなら、この婚約は破棄しようと思う。あなたを苦しめてしまうのは、私の本意ではない」

そんなことない。
違う、全部、私を救ってくれたのは、あなた。
だから、私は――
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