インハウスローヤーは私を妻にして専務になりたいだけ ~なのに待っていたのは溺愛でした~
「ごめんなさい、でも私、あなたと婚約破棄はしたくありません!」

思わず前のめりになりながら、声を張り上げた。
大丈夫、この人は悪魔じゃない。きっと、私を分かってくれる――愛しい、人だから。

目の前で目をパチクリさせる義貴さんに、私は涙を拭い、口を開く。

「私、あなたのことを恨んでいました。ずっと、悪魔だって思ってました。あの日、私なんか助けなければよかったのにって……そうすれば、こんな気持ちにならずにすんだのにって、椎葉家にいる間はずっとそう思ってました」

後ろめたさが胸を覆い、思わず俯いた。

「どんなに苦しくても生きていかなきゃいけない。死ねなかった私は生きなきゃいけない。それは全部あなたのせいだって、そうやって自分の人生を責任転嫁して生きることしかできなかったんです」

受け止めてくれるだろうか。幻滅されるんじゃないか。そんな風に感じるけれど、全部話したい。聞いて欲しい。そんな思いで、言葉を紡ぐ。
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