インハウスローヤーは私を妻にして専務になりたいだけ ~なのに待っていたのは溺愛でした~
「渚紗……?」

妹はぱっと顔を背けた。その隙に義貴さんは、渚紗の袖を捲る。たくさんの痛々しい痣がある。

「そういう性癖であるのなら、私は何も言うことはありません」
「な、朝っぱらから何を言うの!?」
「それはあなたも同じです」

義貴さんは渚紗をじっと見る。何の感情も籠もっていないような顔で。

「渚紗、……幸せなのよね?」
「今更何なの!? 幸せに決まってるじゃない!」

言い放った妹は、泣きそうな顔で叫ぶ。

「私がお姉様より不幸だなんて、そんな事ありえないわ!」

けれど、その顔に〝助けて〟と書いてある気がした。

「今まで言えなかったけれど。私ね、渚紗には幸せになってほしい。渚紗は私のせいで、いつも祝ってもらえなかったから――」

私の人生があの悪魔のせいで不幸だったように、渚紗の人生もまた、私のせいで不幸ばかりだったのだと思う。私は義貴さんを恨んでいた。同じように、渚紗が私を恨んでいるんだと思う。
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