インハウスローヤーは私を妻にして専務になりたいだけ ~なのに待っていたのは溺愛でした~
しばらくすると、不意にエレベーターが開いた。
「おや、うちの可愛い妻はこんなところにいたのですね。探しましたよ」
凱晴さんがゆっくりと、靴を鳴らしてこちらへ歩いてくる。その顔には笑みが浮かんでいるが、どうも不快な感じがする。
「お姉様夫婦にご迷惑をおかけしました。おやおや渚紗、泣いてしまったのですね」
瞬間、渚紗は顔を上げた。その顔は、強張っていた。いつも勝ち気で、強くて、華やかな渚紗の顔が、見る見る青くなってゆく。
こんな渚紗を、私は見たことがない。
「彼女を泣かせていいのは、私だけだったんだけどなぁ。でも見られてしまっては仕方ない。可愛いでしょう?」
近くまでやってきた凱晴さんは、義貴さんの耳元で囁くように言う。
渚紗は固まったまま、ピクリとも動かない。まるで少し前までの、渚紗に会った時の私のように――。
「いつも強がってる彼女が泣く姿。泣かせたくなりますよねぇ、本当、そそる」
はっきりと、私の耳にも聞こえてしまった。青ざめる渚紗を見つめる、彼の厭らしい目つきに背中がぞわりと粟立った。
そして、思わず。
――バチンッ!
と、凱晴さんの頬を叩いてしまった。
「おや、うちの可愛い妻はこんなところにいたのですね。探しましたよ」
凱晴さんがゆっくりと、靴を鳴らしてこちらへ歩いてくる。その顔には笑みが浮かんでいるが、どうも不快な感じがする。
「お姉様夫婦にご迷惑をおかけしました。おやおや渚紗、泣いてしまったのですね」
瞬間、渚紗は顔を上げた。その顔は、強張っていた。いつも勝ち気で、強くて、華やかな渚紗の顔が、見る見る青くなってゆく。
こんな渚紗を、私は見たことがない。
「彼女を泣かせていいのは、私だけだったんだけどなぁ。でも見られてしまっては仕方ない。可愛いでしょう?」
近くまでやってきた凱晴さんは、義貴さんの耳元で囁くように言う。
渚紗は固まったまま、ピクリとも動かない。まるで少し前までの、渚紗に会った時の私のように――。
「いつも強がってる彼女が泣く姿。泣かせたくなりますよねぇ、本当、そそる」
はっきりと、私の耳にも聞こえてしまった。青ざめる渚紗を見つめる、彼の厭らしい目つきに背中がぞわりと粟立った。
そして、思わず。
――バチンッ!
と、凱晴さんの頬を叩いてしまった。