インハウスローヤーは私を妻にして専務になりたいだけ ~なのに待っていたのは溺愛でした~
「ほらほら、渚紗ちゃん」

リビングのソファに座った飯野さんがニコニコしながら、渚紗の背中を優しく押す。渚紗はため息をこぼしながら俯いている。
しばらくそうしていたけれど、渚紗はやがて顔をあげて。

「……ごめんなさい、お姉様」

渚紗が小声でそう言った。じっとこちらを見ていたけれど、言い終わるとすぐにふいっとどこか窓の外を向いてしまった。

「ううん、もういいの」

私が言っても、渚紗はこちらを向いてくれやしない。それでも、頬が少しだけ染まったその様子に、渚紗なりの誠意を感じた。

「渚紗ちゃん、すっごい反省してるからね。たっくさん傷付いて、それで傷付けてたことに気付いたって。不器用だけど、すごくボロボロで、それでもちゃんと自分を受け入れられるようになった。楓ちゃんも、それを――」

「はい、分かってますから」

私が答えると、飯野さんはニカッと笑って、渚紗はしゅんと肩を落とした。
けれど、義貴さんはなぜか不服そうで。

「馴れ馴れしく、彼女の名を呼ぶな」
「はいはい、愛妻家なんですねー義貴は」

ヘラヘラする飯野さんに、義貴さんはため息を零した。
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