辞書には載ってない君のこと
「中村くん、あの…っ」

「あー、いろは!ごめん、今から購買行くんだ!」

まだ名前を呼んだだけなのに謝られた。毎度恒例だもんね、言わなくてもわかっちゃうよね。

やっぱり永華に借りよう、戻って来る永華を待って…

「いろはも行くよ!」

「えぇ!?」

大きく腕を回して早く早くと訴えて来る。

え、購買って今から!?
もうお昼ご飯食べちゃったけど、中村くんはまだ食べてないの!?

ダダダダッと勢いよく階段を降りていく、購買へ行くには一番下まで階段を下りなきゃいけない。

3階の教室からは結構大変だし、お弁当食べたばっかだし、中村くん足早いし…!

「まっ、待って!これっ、なん…で…走ってッ」

どうして私まで呼ばれたのかわかんないけど、てゆーかなんで購買へ行くのかもわかってないけど、もうそんなことどーでもいいくらい疲れた。

やっと階段を降り切ったけど、ここからもう少し…
真っ直ぐ行ったところに購買はある。

息が乱れる、しんど…っ

「いろは!」

ぎゅっと私の手首を掴んだ、中村くんが。


熱かった、掴まれた手首が。

全部の神経が集まって来たみたいに。


そのまま中村くんが駆けてゆく。

引っ張られて連れられるように走った。
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