その溺愛、契約要項にありました?〜DV婚約者から逃れたら、とろ甘な新婚生活が待っていました〜

100 想いを秘めた日【ラッセル視点】

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ティアナからの提案は、正直自分が一番避けたかった事態だったが、実際にこのままのやり方でリドックを説得できるとも思えない。
彼女が大丈夫と言うのを、押さえてしまってはそれこそリドックの言う通り、俺が彼女を強要しているような状態になってしまう。

かと言って、あの状況のリドックと彼女を対面させることには、不安が大きい。

何かあったらすぐにティアナを避難させられる場所をと考えたら、結局我が家の離邸にリドックを呼ぶのがいいだろう。
ダルトンと相談の上、家の中の警備にも手を入れる事を指示して、クロード伝いにリドックの弁護士へ、ティアナを交えた話し合いの用意があることと、いくつかの条件を伝えた。

クロードがリドックの弁護士へ連絡を入れてから数日、あれほど急いていたように見えたリドックからの返事は一切なかった。

話し合いの場に出る覚悟を決めて少しばかり緊張していた様子のティアナも、毎晩困ったように「まだお返事はないのね…」と肩透かしを食らった状態になってしまっている。

そうしている内に、俺が勝手に解決の期限の目安にしていた、休暇がやってきて…少しばかり釈然としない気分を背負ったまま、それでも今日きちんと彼女に気持ちを伝えようと決心してティアナの手を引いて劇場へやって来た。

ティアナがもともと好きな演目であることは彼女の話からも、密かに情報を仕入れたマルガーナの話からも間違いではないはずだった。
それなのに、その日、彼女は演目の間中もどこか上の空で、口数も少なかった。

一体どうしたのだろうか……体調でも悪いのだろうかと何度か確認をするけれど、決まって彼女は無理に微笑んで「大丈夫よ」と言うのでそれ以上を踏み込むことができなかった。

こんなことで、今夜きちんと彼女に気持ちを伝えられるのだろうか……

そんな不安を抱えながら、幕間を迎えた時、それは起こった。
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