その溺愛、契約要項にありました?〜DV婚約者から逃れたら、とろ甘な新婚生活が待っていました〜
24 新妻の葛藤
♢♢
目を覚ますと、隣で眠っているはずの彼の姿はどこにもなかった。
ゆっくりと身体を起こせば、体のあちこちが軋み、なんとも重だるい。
ふとベッドサイドを見れば、昨日彼によって脱がされてベッドの外に放り投げられたはずの寝巻きがきちんと椅子にかけられていて、慌ててそれに袖を通す。
彼は自室に戻って眠ったのだろうか?
まぁ目的は、行為をすることだったのだから一緒に寝る必要はないのかもしれない。
そう納得しながらも、それはそれでなんだか虚しい気持ちになるのだが……所詮契約結婚なんてそんなものだろうと思い直す。
契約にしては、彼は随分と私を気遣ってくれていると思うのだ。
一人の人として、女として、妻として尊重しようとしてくれていることは彼の言葉と行動の端々で感じることができる。
昨晩の行為だってそうだ……痛くて途中で何度も心が折れかけた。しかし何とか耐えられたのは、彼が気遣いながら丁寧に扱ってくれたからだ。
甦ってくるのは、熱い吐息交じりに「大丈夫?」「もう少しだ」と耳元で何度もささやかれた彼の声で。
思い出すだけで、ぞくりと身体が震えた。
やだ私……何を考えてるの!
「流れ」と言った彼の言葉通り流されてしまった行為だったけれど、思いの他受け入れられるものだったことに自分自身でも驚いた。
痛くて仕方なかったが……でも最後の方はなんだかとても気持ちよくて、終わってしまうのが寂しいようなそんな気さえしたのだ。
あれは何だったのだろうか? どこからくる感情だったのだろう?
首をひねったところで、カチャリと部屋の扉が開く音がして、文官の服に袖を通した彼がやってきた。
「もう起きたのか⁉︎ 体は大丈夫か?」
そう言って駆け寄ってくると、寝台に腰かけて私の顔を覗き込んでくる。
少し前に、最中の彼の声を思い出していたので、それだけで私は気恥ずかしくなって慌てて顔を伏せる。
「えぇ……おかげさまで……もうお仕事に行かれるの?」
さっさと服を着ておいて良かった。そうでなければ、裸のまま彼と対面するところだった。流石に昨晩肌を重ねていたとしても、やはり改めて身体を見られるのは恥ずかしい。
そんな私の内心なんていざ知らず、
「あぁ昼には帰るよ。君は今日はゆっくり休んでいてくれ」
彼の長い指がゆったりと髪を梳いて、私の胸がドキリと跳ねる。
昨晩、痛がる私を彼は何度もこうした手つきで撫でてなだめてくれたのだ。
「そんな!大丈夫よ・・・っん」
座って執務を行うくらい大丈夫だ! そう言いかけた私の唇を彼が半ば強引に奪った。
「随分無理をさせたから……今日は甘えておけ」
唇が離れると、まるで子供に言い聞かせるように優しく囁いた彼はぽんぽんと私の頭を叩く。
「っ、分かりましたっ」
もう口付けだけで、すでに腰が砕けそうな私は、観念して布団にもぐりこむ。
これ以上彼と話ていたら、自分の挙動が怪しくなりそうで怖い。
大人しく布団に戻った私を見届けた彼は、それでいいと言うように頷いて、ベッドから腰を上げた。
「朝食は準備させるよ。行ってくる」
「はい……行ってらっしゃいませ」
布団からチラリと顔を出して見上げると、彼は柔らかく瞳を細めて、そして部屋を出て行った。
扉が閉まるのを確認して、私は慌てて起き上がる。腰がズキリと痛んだけれど、それどころではない。
両手で頭を抱えると折り曲げた膝に額を乗せる。
何なのだ! これではまるで新婚夫婦だ!否……実際は間違っていないのだけど! 甘い! 甘すぎやしないか?
これが世の新婚夫婦の普通? いや私達は契約結婚なのであって、それでこれだけ甘いって……本当の夫婦の皆さんはどれだけ極甘な朝をすごしているの⁉︎
胸がバクバクと忙しなく騒いでいる。
あぁ! だめよ! 契約結婚なんだから! いちいち狼狽えないの!
必死で自分に言い聞かせてみるけれど、ふとした瞬間に、昨夜の事を思い出して
わぁああ!
真っ赤になった顔を隠すために布団に潜り込んだ。
こんな様子をメイド達に見られた恥ずかしすぎる!
目を覚ますと、隣で眠っているはずの彼の姿はどこにもなかった。
ゆっくりと身体を起こせば、体のあちこちが軋み、なんとも重だるい。
ふとベッドサイドを見れば、昨日彼によって脱がされてベッドの外に放り投げられたはずの寝巻きがきちんと椅子にかけられていて、慌ててそれに袖を通す。
彼は自室に戻って眠ったのだろうか?
まぁ目的は、行為をすることだったのだから一緒に寝る必要はないのかもしれない。
そう納得しながらも、それはそれでなんだか虚しい気持ちになるのだが……所詮契約結婚なんてそんなものだろうと思い直す。
契約にしては、彼は随分と私を気遣ってくれていると思うのだ。
一人の人として、女として、妻として尊重しようとしてくれていることは彼の言葉と行動の端々で感じることができる。
昨晩の行為だってそうだ……痛くて途中で何度も心が折れかけた。しかし何とか耐えられたのは、彼が気遣いながら丁寧に扱ってくれたからだ。
甦ってくるのは、熱い吐息交じりに「大丈夫?」「もう少しだ」と耳元で何度もささやかれた彼の声で。
思い出すだけで、ぞくりと身体が震えた。
やだ私……何を考えてるの!
「流れ」と言った彼の言葉通り流されてしまった行為だったけれど、思いの他受け入れられるものだったことに自分自身でも驚いた。
痛くて仕方なかったが……でも最後の方はなんだかとても気持ちよくて、終わってしまうのが寂しいようなそんな気さえしたのだ。
あれは何だったのだろうか? どこからくる感情だったのだろう?
首をひねったところで、カチャリと部屋の扉が開く音がして、文官の服に袖を通した彼がやってきた。
「もう起きたのか⁉︎ 体は大丈夫か?」
そう言って駆け寄ってくると、寝台に腰かけて私の顔を覗き込んでくる。
少し前に、最中の彼の声を思い出していたので、それだけで私は気恥ずかしくなって慌てて顔を伏せる。
「えぇ……おかげさまで……もうお仕事に行かれるの?」
さっさと服を着ておいて良かった。そうでなければ、裸のまま彼と対面するところだった。流石に昨晩肌を重ねていたとしても、やはり改めて身体を見られるのは恥ずかしい。
そんな私の内心なんていざ知らず、
「あぁ昼には帰るよ。君は今日はゆっくり休んでいてくれ」
彼の長い指がゆったりと髪を梳いて、私の胸がドキリと跳ねる。
昨晩、痛がる私を彼は何度もこうした手つきで撫でてなだめてくれたのだ。
「そんな!大丈夫よ・・・っん」
座って執務を行うくらい大丈夫だ! そう言いかけた私の唇を彼が半ば強引に奪った。
「随分無理をさせたから……今日は甘えておけ」
唇が離れると、まるで子供に言い聞かせるように優しく囁いた彼はぽんぽんと私の頭を叩く。
「っ、分かりましたっ」
もう口付けだけで、すでに腰が砕けそうな私は、観念して布団にもぐりこむ。
これ以上彼と話ていたら、自分の挙動が怪しくなりそうで怖い。
大人しく布団に戻った私を見届けた彼は、それでいいと言うように頷いて、ベッドから腰を上げた。
「朝食は準備させるよ。行ってくる」
「はい……行ってらっしゃいませ」
布団からチラリと顔を出して見上げると、彼は柔らかく瞳を細めて、そして部屋を出て行った。
扉が閉まるのを確認して、私は慌てて起き上がる。腰がズキリと痛んだけれど、それどころではない。
両手で頭を抱えると折り曲げた膝に額を乗せる。
何なのだ! これではまるで新婚夫婦だ!否……実際は間違っていないのだけど! 甘い! 甘すぎやしないか?
これが世の新婚夫婦の普通? いや私達は契約結婚なのであって、それでこれだけ甘いって……本当の夫婦の皆さんはどれだけ極甘な朝をすごしているの⁉︎
胸がバクバクと忙しなく騒いでいる。
あぁ! だめよ! 契約結婚なんだから! いちいち狼狽えないの!
必死で自分に言い聞かせてみるけれど、ふとした瞬間に、昨夜の事を思い出して
わぁああ!
真っ赤になった顔を隠すために布団に潜り込んだ。
こんな様子をメイド達に見られた恥ずかしすぎる!