その溺愛、契約要項にありました?〜DV婚約者から逃れたら、とろ甘な新婚生活が待っていました〜
33 好き
朝方のうっすらと明るい日差しで目を覚まして、ぼんやりと視界に入った天蓋を眺める。
視線を送らなくても分かる、隣で彼が眠っている、息遣いとぬくもり。
自分が彼の腕の中で眠っていた事を思い出す。
昨晩、グランドリーとのやり取りの後、ひどく怯えていた私を、彼はずっと大丈夫だと、抱きしめて時には甘く溶けるようなキスをしてなだめてくれていた。
そうしている内に、どちらからともなく、互いを求め出して……そう、私も強烈に彼を求めて……
『ティアナ…』
『っ‥ラース!』
行為の最中、互いに何度も何度も名前を呼びあって、絡みつくように口づけあって……手も硬く握りあっていた。
初めて、あれほど誰かと溶け合って、いっその事一つになってしまいたいと思った。
もっともっとと、溺れるように欲する、あの感覚は、何なのだろう。
「っ―――!」
思い出すだけでずくりと身体の奥が疼く。
ゆっくりと首を動かして、隣で規則的な寝息を立てている彼を見上げる。
今日は隣で眠ってくれている。
長いまつ毛に、すっと通った形の良い鼻梁。初めて見た時から隙の無い美しい顔立ちの人だとは思っていたけれど、寝顔はどこかあどけない。
普段の凛々しい顔も、時々見せるこうした無防備な顔も……肌を重ねている時の、あの切なげで情熱的な表情も……
あぁ、私この人のことが好きなんだ。
唐突にそんな思いが私の胸の奥にすとんと落ちた。
きゅうっと、シーツを握りしめる。いずれはそうなるだろうとそんな予兆は少し前から感じ取っていた。
抑えなければと思っていたのに、もう素直に自覚するしかないところまで、来てしまったのだ。
契約結婚なのに、これでは彼を狙っていた女性たちと同じではないか。
「んんっ」
寝苦しかったのだろうか、僅かに身じろぎした彼が、うっすらと目を開けた。
寝ぼけているのか、ぼんやりと虚な漆黒の眼が私を捉えて、柔らかく微笑むと、私の下になっていた彼の手が、ぎゅうっと私の肩を抱き直した。
彼の身体に引き寄せられる形になった私はされるがまま、頬を彼の胸につける形になり、トクトクと力強い彼の鼓動が私の頭に響く。
そうしてそのまま大きく息をついた彼は、また眠りについたらしい。
おそらく完全に寝ぼけていたのだろう。
抱き枕のように抱えられてしまった私は、そんな場所から逃れられるわけもなく、彼の鼓動とは対照的にとても早いリズムを刻む自身の胸を鎮めるのに苦労した。
彼が眠っていてくれて、良かった。
もし、彼がこの鼓動の速さを知ってしまったら、私の想いが彼にバレてしまうに違いない。
バレてはだめ。いや、バレるわけにはいかない。
だって私はあくまで契約の妻なのだから。
視線を送らなくても分かる、隣で彼が眠っている、息遣いとぬくもり。
自分が彼の腕の中で眠っていた事を思い出す。
昨晩、グランドリーとのやり取りの後、ひどく怯えていた私を、彼はずっと大丈夫だと、抱きしめて時には甘く溶けるようなキスをしてなだめてくれていた。
そうしている内に、どちらからともなく、互いを求め出して……そう、私も強烈に彼を求めて……
『ティアナ…』
『っ‥ラース!』
行為の最中、互いに何度も何度も名前を呼びあって、絡みつくように口づけあって……手も硬く握りあっていた。
初めて、あれほど誰かと溶け合って、いっその事一つになってしまいたいと思った。
もっともっとと、溺れるように欲する、あの感覚は、何なのだろう。
「っ―――!」
思い出すだけでずくりと身体の奥が疼く。
ゆっくりと首を動かして、隣で規則的な寝息を立てている彼を見上げる。
今日は隣で眠ってくれている。
長いまつ毛に、すっと通った形の良い鼻梁。初めて見た時から隙の無い美しい顔立ちの人だとは思っていたけれど、寝顔はどこかあどけない。
普段の凛々しい顔も、時々見せるこうした無防備な顔も……肌を重ねている時の、あの切なげで情熱的な表情も……
あぁ、私この人のことが好きなんだ。
唐突にそんな思いが私の胸の奥にすとんと落ちた。
きゅうっと、シーツを握りしめる。いずれはそうなるだろうとそんな予兆は少し前から感じ取っていた。
抑えなければと思っていたのに、もう素直に自覚するしかないところまで、来てしまったのだ。
契約結婚なのに、これでは彼を狙っていた女性たちと同じではないか。
「んんっ」
寝苦しかったのだろうか、僅かに身じろぎした彼が、うっすらと目を開けた。
寝ぼけているのか、ぼんやりと虚な漆黒の眼が私を捉えて、柔らかく微笑むと、私の下になっていた彼の手が、ぎゅうっと私の肩を抱き直した。
彼の身体に引き寄せられる形になった私はされるがまま、頬を彼の胸につける形になり、トクトクと力強い彼の鼓動が私の頭に響く。
そうしてそのまま大きく息をついた彼は、また眠りについたらしい。
おそらく完全に寝ぼけていたのだろう。
抱き枕のように抱えられてしまった私は、そんな場所から逃れられるわけもなく、彼の鼓動とは対照的にとても早いリズムを刻む自身の胸を鎮めるのに苦労した。
彼が眠っていてくれて、良かった。
もし、彼がこの鼓動の速さを知ってしまったら、私の想いが彼にバレてしまうに違いない。
バレてはだめ。いや、バレるわけにはいかない。
だって私はあくまで契約の妻なのだから。