その溺愛、契約要項にありました?〜DV婚約者から逃れたら、とろ甘な新婚生活が待っていました〜
34 あとの話
「あの後ね、すごかったのよ!」
王宮の舞踏会から1週間。
ロブダート侯爵家をジャクリーンが訪ねてきた。
舞踏会でのあの件を心配した彼女からは、翌日には私の身を案じる手紙が届いていて、近いうちに顔を見に行くと書いてあった。
結局、私の予定と彼女の予定が合致したのが1週間後の今日であったのだが、来訪して私の顔を見るなり、彼女は「まぁ! 元気そうで安心したわ!」と心底ホッとしたように笑った。
そうしてお茶の席に着くと、彼女の口からは、私達が帰宅した後の会場の様子が語られた。
「取り残されたグランドリーのところに、王女殿下が向かって行って、バチンッ!って頬を張ったのよ! 恥を知りなさい!って」
それはそれは随分なお怒りようでね。どうやら彼が貴方たち夫婦にはめられたと有りもしない噂を吹聴していた事もお耳に入っていたらしいわね!
そう言ってジャクリーンは、自身の頬を撫でながら
なかなか見事なビンタだったわ! と肩をすくめた。
「すぐさま真っ青になったお父上のスペンス侯爵が、頭を下げて彼を引いて帰って行ったわ! そのあとは、貴方達の話題で持ちきりよ!」
そう言ってふふふと笑った彼女に、私は少したじろいだのだが、そんな心情を察した彼女は「大丈夫よ」と片目を瞑った。
「酷い婚約者に耐えていた健気な貴方に、手を差し伸べて大切に守ろうとしているロブダート卿。その前に貴方たちの2人の仲睦まじい様子をみんなが見ていたし、貴方を庇うように立っていた彼の姿に、御令嬢達はもう大興奮のメロメロよ!」
「っ……メロメロ?」
「まぁ旦那様の株が上がったということよ!喜んでおきましょう」
唖然とする私に、ジャクリーンはサッパリと言い放った。
「いいじゃない! 素敵な旦那様で!」
「そうだけど……」
彼がいい夫であることは間違いない。しかもそれを親友から言われるならば、嬉しいことではあるが、なんだか照れ臭くもあった。
「でも安心した、グランドリーから逃げるための結婚だと思ってたからさ!」
次にジャクリーンが放った言葉に、私はぎくりとする。
もしかして、舞踏会での振る舞いも、見る人によってはそう見えていたのだろうか? そんな不安が一瞬頭をよぎった。
しかし
「貴方が誰かを頼っている姿なんて初めて見た! 不謹慎かもしれないけど、あぁきちんと頼れる相手を見つけたんだなぁって嬉しくなっちゃった」
そう言ってジャクリーンは、微笑んでコクリとお茶を飲んだ。
「そう? そんな風に見えた?」
「少なくとも私にはね! ほらティアナは昔から、いつも何にも執着してないで自立してる感じだったから、結婚生活も淡々とこなすのかなって思ってたの。それが、あんな風に寄り添って頼っている姿を見られるなんて……ねぇ?」
その時の光景を思い出したのか、ジャクリーンがニマリと笑って揶揄うようにこちらを見るから、私の頬も熱くなる。
「多分、そんな貴方の一面を初めて見たからこそ、グランドリーは面白く無かったのかもしれないわね! お馬鹿な人よね!」
「そんなに顔に出てる? やだ、気をつけないと!」
「あらどうして? いいじゃないの! 旦那様にはしっかり甘えておけばいいのよ?」
何が悪いのか分からないと言いたげなジャクリーンに「契約結婚だから、好きになってはダメなのよ~」と説明するわけにもいかない私は、困った顔で、微笑むしか無かった。
王宮の舞踏会から1週間。
ロブダート侯爵家をジャクリーンが訪ねてきた。
舞踏会でのあの件を心配した彼女からは、翌日には私の身を案じる手紙が届いていて、近いうちに顔を見に行くと書いてあった。
結局、私の予定と彼女の予定が合致したのが1週間後の今日であったのだが、来訪して私の顔を見るなり、彼女は「まぁ! 元気そうで安心したわ!」と心底ホッとしたように笑った。
そうしてお茶の席に着くと、彼女の口からは、私達が帰宅した後の会場の様子が語られた。
「取り残されたグランドリーのところに、王女殿下が向かって行って、バチンッ!って頬を張ったのよ! 恥を知りなさい!って」
それはそれは随分なお怒りようでね。どうやら彼が貴方たち夫婦にはめられたと有りもしない噂を吹聴していた事もお耳に入っていたらしいわね!
そう言ってジャクリーンは、自身の頬を撫でながら
なかなか見事なビンタだったわ! と肩をすくめた。
「すぐさま真っ青になったお父上のスペンス侯爵が、頭を下げて彼を引いて帰って行ったわ! そのあとは、貴方達の話題で持ちきりよ!」
そう言ってふふふと笑った彼女に、私は少したじろいだのだが、そんな心情を察した彼女は「大丈夫よ」と片目を瞑った。
「酷い婚約者に耐えていた健気な貴方に、手を差し伸べて大切に守ろうとしているロブダート卿。その前に貴方たちの2人の仲睦まじい様子をみんなが見ていたし、貴方を庇うように立っていた彼の姿に、御令嬢達はもう大興奮のメロメロよ!」
「っ……メロメロ?」
「まぁ旦那様の株が上がったということよ!喜んでおきましょう」
唖然とする私に、ジャクリーンはサッパリと言い放った。
「いいじゃない! 素敵な旦那様で!」
「そうだけど……」
彼がいい夫であることは間違いない。しかもそれを親友から言われるならば、嬉しいことではあるが、なんだか照れ臭くもあった。
「でも安心した、グランドリーから逃げるための結婚だと思ってたからさ!」
次にジャクリーンが放った言葉に、私はぎくりとする。
もしかして、舞踏会での振る舞いも、見る人によってはそう見えていたのだろうか? そんな不安が一瞬頭をよぎった。
しかし
「貴方が誰かを頼っている姿なんて初めて見た! 不謹慎かもしれないけど、あぁきちんと頼れる相手を見つけたんだなぁって嬉しくなっちゃった」
そう言ってジャクリーンは、微笑んでコクリとお茶を飲んだ。
「そう? そんな風に見えた?」
「少なくとも私にはね! ほらティアナは昔から、いつも何にも執着してないで自立してる感じだったから、結婚生活も淡々とこなすのかなって思ってたの。それが、あんな風に寄り添って頼っている姿を見られるなんて……ねぇ?」
その時の光景を思い出したのか、ジャクリーンがニマリと笑って揶揄うようにこちらを見るから、私の頬も熱くなる。
「多分、そんな貴方の一面を初めて見たからこそ、グランドリーは面白く無かったのかもしれないわね! お馬鹿な人よね!」
「そんなに顔に出てる? やだ、気をつけないと!」
「あらどうして? いいじゃないの! 旦那様にはしっかり甘えておけばいいのよ?」
何が悪いのか分からないと言いたげなジャクリーンに「契約結婚だから、好きになってはダメなのよ~」と説明するわけにもいかない私は、困った顔で、微笑むしか無かった。