その溺愛、契約要項にありました?〜DV婚約者から逃れたら、とろ甘な新婚生活が待っていました〜
66 生い立ちと2人の関係【ラッセル視点】
リドック・ロドレルについての報告が俺の手元に来たのはその翌日のことだった。
ディノの言う通り、たしかに彼は王立学院時代にティアナとは同級生で成績もかなり優秀だった。
兄のグランドリーよりも、よほど出来が良かっただろうに……
次男として産まれた事、それ以前に妾の子として産まれたのが不幸だった。
報告によれば、彼の母親はスペンス家の使用人でどうやら父であるスペンス侯爵が結婚前から密かに囲っていたのだという。
グランドリーの母である現スペンス侯爵夫人と結婚する際、すでに2人の間には娘がいたそうだが、その娘は婚約と同時にスペンス家の遠縁の親族に養子として出されたそうだ。
そして夫人との間にグランドリーが生まれた。
しかし元々気性が激しい夫人と侯爵はその後上手く行かなかったのだろう。
数年して、侯爵が妾を密かに囲っていた事とその女がまた妊娠し、男の子どもを産んだ事が夫人の耳に入った。
その時産まれた子どもがリドックで、彼を産んだ妾である母親は産後の肥立ちが悪く半月後に亡くなったそうだ。
そのままリドックは、父とその妻、そして腹違いの兄の中で育ったらしい。
まともな環境だったとは思えない。
ティアナの実家とスペンス侯爵家の最初の話し合いの際に同席していた夫人の様子を思い出して、自然と眉間に皺がよった。
夫人は自分が産んだ息子、つまりグランドリーを随分溺愛していたらしい。
『あの子は優しくて紳士な子ですよ? それを怒らせるなんて、ティアナさんがよほど気に触る事をなさったのでしょう?』
『だいたい少しくらい叩かれたくらいで、大騒ぎして王家まで巻き込んで!』
『王太子殿下が注視されてた? まぁ殿下にまで色目を使っていたの!? それで貴方も騙されているクチ? まぁ恐ろしい娘だこと!』
『グランドリーは悪いことなどしていませんわ! 真っ直ぐな子ですから、道を逸れようとしている婚約者が許せなかったのですわ! それを騒ぎ立ててあの子を悪者にしたてあげて! 被害者はあの子ですわ!』
他にも散々キーキーと持論を喚き散らしていたために。1度目の話し合いはまともな話もできず、すぐにお開きとなったのだ。
2回目からの話し合いには彼女は来なかった。あちら側の弁護士と、侯爵自身が彼女が同席すると不利になる事を懸念したのだろう。
何度かティアナと彼女の母に文句の手紙が送られてきていたが、こちらで目を通して侯爵に突き返すと、しばらくしてそれも止まった。
グランドリーの苛烈で執念深い性格はおそらく母譲りなのだろう。
そんな女が、夫が妾に生ませた次男を可愛がるなどと到底思えない。
むしろ、長男と次男、本妻と妾の子、その差をかなり植え付けながら育てたのではないだろうか。
随分と苦労して育ってきたのかもしれない。
兄よりも優秀でありがら、妾の子と言われ虐げられた自分と、同じように優秀でありながら、兄のような男に虐げられたティアナを重ねたのだろうか?
それであの謝罪に繋がったのか……
もしくは友人として謝罪せずにはいられなかったのだろうか……
報告書を読み進めて行くと、グランドリーとの関係も記されていたが、案の定、兄弟仲は最低だったらしい。
そうであるならば、いくら同級生とはいえ、仲の悪い兄の婚約者であるティアナと普通は仲良くするだろうか?
ディノの言葉をとれば、いいライバルで、仲は良かったと……その関係も不可解すぎる。
考えられるとしたら、長年の異母兄と継母からの仕打ちに耐えて、ものすごい人格者に育ったのか……
逆に屈折しすぎて得体の知れない闇を抱えて何かを企んでいるのか……
この報告だけでは、それを判断する事は出来なかった。
一度ティアナに聞いてみるべきなのかもしれない。
そう思いながらも、心の中のどこかに2人の関係を話した時のディノの様子が気になった。
もしかしたら、もう一つ違う理由が浮かんだが、慌ててその考えを頭の片隅へ追いやった。
ディノの言う通り、たしかに彼は王立学院時代にティアナとは同級生で成績もかなり優秀だった。
兄のグランドリーよりも、よほど出来が良かっただろうに……
次男として産まれた事、それ以前に妾の子として産まれたのが不幸だった。
報告によれば、彼の母親はスペンス家の使用人でどうやら父であるスペンス侯爵が結婚前から密かに囲っていたのだという。
グランドリーの母である現スペンス侯爵夫人と結婚する際、すでに2人の間には娘がいたそうだが、その娘は婚約と同時にスペンス家の遠縁の親族に養子として出されたそうだ。
そして夫人との間にグランドリーが生まれた。
しかし元々気性が激しい夫人と侯爵はその後上手く行かなかったのだろう。
数年して、侯爵が妾を密かに囲っていた事とその女がまた妊娠し、男の子どもを産んだ事が夫人の耳に入った。
その時産まれた子どもがリドックで、彼を産んだ妾である母親は産後の肥立ちが悪く半月後に亡くなったそうだ。
そのままリドックは、父とその妻、そして腹違いの兄の中で育ったらしい。
まともな環境だったとは思えない。
ティアナの実家とスペンス侯爵家の最初の話し合いの際に同席していた夫人の様子を思い出して、自然と眉間に皺がよった。
夫人は自分が産んだ息子、つまりグランドリーを随分溺愛していたらしい。
『あの子は優しくて紳士な子ですよ? それを怒らせるなんて、ティアナさんがよほど気に触る事をなさったのでしょう?』
『だいたい少しくらい叩かれたくらいで、大騒ぎして王家まで巻き込んで!』
『王太子殿下が注視されてた? まぁ殿下にまで色目を使っていたの!? それで貴方も騙されているクチ? まぁ恐ろしい娘だこと!』
『グランドリーは悪いことなどしていませんわ! 真っ直ぐな子ですから、道を逸れようとしている婚約者が許せなかったのですわ! それを騒ぎ立ててあの子を悪者にしたてあげて! 被害者はあの子ですわ!』
他にも散々キーキーと持論を喚き散らしていたために。1度目の話し合いはまともな話もできず、すぐにお開きとなったのだ。
2回目からの話し合いには彼女は来なかった。あちら側の弁護士と、侯爵自身が彼女が同席すると不利になる事を懸念したのだろう。
何度かティアナと彼女の母に文句の手紙が送られてきていたが、こちらで目を通して侯爵に突き返すと、しばらくしてそれも止まった。
グランドリーの苛烈で執念深い性格はおそらく母譲りなのだろう。
そんな女が、夫が妾に生ませた次男を可愛がるなどと到底思えない。
むしろ、長男と次男、本妻と妾の子、その差をかなり植え付けながら育てたのではないだろうか。
随分と苦労して育ってきたのかもしれない。
兄よりも優秀でありがら、妾の子と言われ虐げられた自分と、同じように優秀でありながら、兄のような男に虐げられたティアナを重ねたのだろうか?
それであの謝罪に繋がったのか……
もしくは友人として謝罪せずにはいられなかったのだろうか……
報告書を読み進めて行くと、グランドリーとの関係も記されていたが、案の定、兄弟仲は最低だったらしい。
そうであるならば、いくら同級生とはいえ、仲の悪い兄の婚約者であるティアナと普通は仲良くするだろうか?
ディノの言葉をとれば、いいライバルで、仲は良かったと……その関係も不可解すぎる。
考えられるとしたら、長年の異母兄と継母からの仕打ちに耐えて、ものすごい人格者に育ったのか……
逆に屈折しすぎて得体の知れない闇を抱えて何かを企んでいるのか……
この報告だけでは、それを判断する事は出来なかった。
一度ティアナに聞いてみるべきなのかもしれない。
そう思いながらも、心の中のどこかに2人の関係を話した時のディノの様子が気になった。
もしかしたら、もう一つ違う理由が浮かんだが、慌ててその考えを頭の片隅へ追いやった。