その溺愛、契約要項にありました?〜DV婚約者から逃れたら、とろ甘な新婚生活が待っていました〜

7 王宮の庭園で3

「ロブダート卿は何故婚約者をお作りにならないの?」

気分も落ち着いて再び歩き出してたところで、私は彼に疑問を投げかけてみた。
彼が私とグランドリーの婚約を不思議に思っていたように、私も彼の女性を寄せ付けない態度には疑問を持っていた。
初めに踏み込んできたのは彼なのだから、私だって少しくらい踏み込んでいいだろう。

そう思って聞いてみれば

「面倒だから。多分考え方はあなたと一緒だ。俺は、愛とかそういうものより安心して家を任せられる人を求めている。しかしなかなか、うちの事業を任せられるほどの令嬢はいない」

なんのこだわりもなく、さらりと返答された。

「なるほど」

あまりにもドライな回答に、妙に納得してしまった。

きっと彼のような人が婚約者だったら、互いの利害が一致して良かったのかもしれない。


「提案なんだが……俺と結婚する気はないか?」

そんなことを思ったせいだろうか、そのあと彼の口から出てきた言葉に、私はひどく心惹かれてしまったのだ。



多分たっぷり10秒は言葉を失った。


「ふふ、何のご冗談ですの?」

きっと揶揄われているのだと思い至って笑えば、予想外に彼の真剣な視線が私を見下ろしていた。


「もういい加減、山のようにくる縁談を捌くのも面倒だしそんな事に無駄に時間を割きたくないのが正直なところだが、俺は家と事業を安心して任せられる優秀な女主人となる妻が欲しい。そこに愛情の有無は求めるつもりがない。
あなたの能力を生かせる環境を与えることができる」

「本気なの?」

私の言葉に彼はゆっくりと頷いた。

「でも、私には婚約者がいるのよ?」

婚約破棄をした上にすぐに彼と結婚なんてなれば、世間の目は冷たい、まして我が家は侯爵家であるグランドリーの家から援助をもらっている。
とても現実的な話ではない。

それなのに彼の視線は一切揺らぐことがなくて……その瞳に吸い寄せられるように私は言葉を失った。

「できなくはない……だがそれにはあなたの協力が不可欠だ。」

「わたしの?」

「選んでくれ……今すぐにとは言わない。でも近いうちに必ず君の考えを聞かせてほしい」
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