あなたに夢中

救世主現る

週明けの月曜日。
いつものように出社して総務部のある五階に到着したエレベーターから降りると、通路脇に設置された自動販売機でミルクティーを買っている渡辺君と出くわす。

「おはようございます」
「おはよう。昨日はごちそうさまでした」

昨日、私たちは渋谷で偶然会って、渡辺君に誘われるがままカフェに入った。
後輩におごってもらうのは気が引ける。ここは年上の私が代金を支払おうと思ったのに、渡辺君は自分が誘ったのだからと言ってパンケーキをごちそうしてくれたのだ。

「あ、コンタクトにしましたね?」
「う、うん」
「メガネで隠れていた目もとがハッキリ見えてとてもいいです。それから髪も切ったんですね。明るい髪色がよく似合っています」
「ありがとう」

褒め言葉のオンパレードがくすぐったい。

昨日は渡辺君と別れた後に、眼科を受診してコンタクトレンズを購入しただけでなく、その足でサロンに行って、伸びたままの髪を肩の上あたりでカットして毛先をフワリと巻いてもらった。
渡辺君と一緒に入ったカフェにはオシャレをしたかわいい女の子がたくさんいたように、Cosmo7のライブにも、ファッショナブルな女の子たちが大勢参戦するはずだ。
初めてNAOKIに会えるのだから赤い服を新調するだけではなく、もっと気合いを入れて臨まなければダメだ。
そう思い、メガネをはずした方が似合うという渡辺君のアドバイスと、カフェで見かけた女の子たちに感化されてイメチェンを試みたのだ。
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