あなたに夢中
一日の業務が終わった午後六時すぎ。
帰宅する準備を整えていると、坂本さんが書類の束を私のデスクの上にドンと置く。
「これなんだけど、明日が締め切りだって今気づいたの。悪いけれどお願いできる?」
五センチほどの厚みがある資料を明日までにまとめるには、残業しないと間に合わない。
パソコンの電源を落としたのを知っていながら、仕事を強引に押しつけてくるなんて完全な嫌がらせだ。
「……わかりました」
文句を言いたい気持ちを堪え、仕方なく仕事を引き受ける。すると足音を響かせて私たちに近づいてきた渡辺君が、デスクの上に置かれた書類の束を坂本さんに突き返した。
「すみません。この後ふたりで食事に行く約束をしているので残業はできません」
「えっ?」
なにが起きているのか理解できずにあたふたしていると、渡辺君に手首を掴まれる。
「堀田さん、行きましょう」
「あっ!」
唖然としている坂本さんの脇をすり抜け、彼に手を引かれてオフィスを後にする。
「あ、あの……食事って?」
残業をきっぱりと断ってくれて助かったけど、食事に行く約束などしていない。
帰宅する準備を整えていると、坂本さんが書類の束を私のデスクの上にドンと置く。
「これなんだけど、明日が締め切りだって今気づいたの。悪いけれどお願いできる?」
五センチほどの厚みがある資料を明日までにまとめるには、残業しないと間に合わない。
パソコンの電源を落としたのを知っていながら、仕事を強引に押しつけてくるなんて完全な嫌がらせだ。
「……わかりました」
文句を言いたい気持ちを堪え、仕方なく仕事を引き受ける。すると足音を響かせて私たちに近づいてきた渡辺君が、デスクの上に置かれた書類の束を坂本さんに突き返した。
「すみません。この後ふたりで食事に行く約束をしているので残業はできません」
「えっ?」
なにが起きているのか理解できずにあたふたしていると、渡辺君に手首を掴まれる。
「堀田さん、行きましょう」
「あっ!」
唖然としている坂本さんの脇をすり抜け、彼に手を引かれてオフィスを後にする。
「あ、あの……食事って?」
残業をきっぱりと断ってくれて助かったけど、食事に行く約束などしていない。