あなたに夢中
彼の秘密
翌日。
渡辺君とイタリアンレストランで過ごした昨夜の時間を思い返して始業の準備を整えていると、出社してきた坂本さんに声をかけられる。
「堀田さん。ちょっといい?」
「……はい」
オフィスを出て通路を進む彼女の後に続く。
昨日は残業をしないで帰ってしまったけれど、今日が締め切りの仕事は終わったのだろうか。
進捗状況を気にかけながら歩を進めていると、坂本さんが通路のつきあたりで立ち止まった。
あと十分もしたら始業開始時間となる。それなのにわざわざ人のいないこの場所に移動したのは、オフィスではできない話をするためだ。
坂本さんはきっと〝あのこと〟について尋ねてくるに違いないと、心の準備を整えた。
「渡辺君と付き合っているの?」
予想していた通り、坂本さんは私と渡辺君の関係を尋ねてくる。
「いいえ。付き合っていません」
ストレートな問いかけを即座に否定したものの、彼女は納得のいかない面持ちで体の前で両腕を組む。
残業を断ってふたりで帰る姿を目のあたりにしたら、私たちが付き合っているのではないかと疑うのは当然だ。
渡辺君とイタリアンレストランで過ごした昨夜の時間を思い返して始業の準備を整えていると、出社してきた坂本さんに声をかけられる。
「堀田さん。ちょっといい?」
「……はい」
オフィスを出て通路を進む彼女の後に続く。
昨日は残業をしないで帰ってしまったけれど、今日が締め切りの仕事は終わったのだろうか。
進捗状況を気にかけながら歩を進めていると、坂本さんが通路のつきあたりで立ち止まった。
あと十分もしたら始業開始時間となる。それなのにわざわざ人のいないこの場所に移動したのは、オフィスではできない話をするためだ。
坂本さんはきっと〝あのこと〟について尋ねてくるに違いないと、心の準備を整えた。
「渡辺君と付き合っているの?」
予想していた通り、坂本さんは私と渡辺君の関係を尋ねてくる。
「いいえ。付き合っていません」
ストレートな問いかけを即座に否定したものの、彼女は納得のいかない面持ちで体の前で両腕を組む。
残業を断ってふたりで帰る姿を目のあたりにしたら、私たちが付き合っているのではないかと疑うのは当然だ。