あなたに夢中
「おいしいですね」
「うん。桃のパフェもおいしそうだね」
「ひと口食べてみます？」

思いもよらない彼の言葉に耳を疑う。
私はみずみずしくて甘そうな桃に目を奪われただけで、人がオーダーしたものをほしがるほど食いしん坊ではないし、そもそも渡辺君がすでに口をつけたパフェを食べるなんて恥ずかしすぎて無理だ。

「ううん、大丈夫。ありがとう」

渡辺君を変に意識してしまったことを誤魔化すように、平静を装う。しかし彼は私のわずかな変化を見逃さない。

「顔が赤いけど、どうかしましたか？」

テーブルに頬杖をついた渡辺君の口角が上がる。
どこか楽しげな表情を見た瞬間、私が照れているとわかったうえで意地悪を言っているのだと理解した。
私をからかっておもしろがる彼に文句のひとつも言いたいところだけど、くしゃっとした笑顔を見たらなにも言えない。

「なんでもないです」

年下の彼に振り回されているのに、ちっとも嫌な気がしないのはなぜだろうと思いつつ、食べ途中のパフェを口に運んだ。
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