あなたに夢中
「佳乃さん。鍵は?」
遠くから聞こえてくる声に従ってバッグから鍵を取り出すと、玄関ドアを解錠する音が耳に届く。
「ほら、靴を脱いで」
頭がボンヤリとする中、手を借りて靴を脱いだものの襲ってくる眠気には逆らえず、その場で体を横たえて瞼を閉じる。
「玄関で寝たら風邪をひきますよ」
「ん……」
「仕方ないな」
さっきから聞こえる母親のような小言をうるさく思っていると、不意に体が宙に舞い上がった。
ゆりかごに揺られているような緩やかな振動が心地いい。しかし至福のひとときは長くは続かなかった。
体がポスンと沈み込む感覚に襲われ、ハッと目が覚める。
「佳乃さんって、NAOKIが好きなんですか?」
私の顔を覗き込む渡辺君と目が合い、靄がかかっていたような頭が瞬時にクリアになった。
上半身を起こして辺りを見回す。
欧風スタイルの部屋に憧れて買った、木目調のシンプルなインテリアで統一されたこの場所は私の家で間違いない。それなのに、どうして渡辺君がいるのかわからない。
額に手をあてておぼろげな記憶をたどっていると、彼はため息をついてその場に座り込む。
「ビールを飲みすぎて真っ直ぐ歩けない状態だったので、タクシーを呼んで家まで送りました」
遠くから聞こえてくる声に従ってバッグから鍵を取り出すと、玄関ドアを解錠する音が耳に届く。
「ほら、靴を脱いで」
頭がボンヤリとする中、手を借りて靴を脱いだものの襲ってくる眠気には逆らえず、その場で体を横たえて瞼を閉じる。
「玄関で寝たら風邪をひきますよ」
「ん……」
「仕方ないな」
さっきから聞こえる母親のような小言をうるさく思っていると、不意に体が宙に舞い上がった。
ゆりかごに揺られているような緩やかな振動が心地いい。しかし至福のひとときは長くは続かなかった。
体がポスンと沈み込む感覚に襲われ、ハッと目が覚める。
「佳乃さんって、NAOKIが好きなんですか?」
私の顔を覗き込む渡辺君と目が合い、靄がかかっていたような頭が瞬時にクリアになった。
上半身を起こして辺りを見回す。
欧風スタイルの部屋に憧れて買った、木目調のシンプルなインテリアで統一されたこの場所は私の家で間違いない。それなのに、どうして渡辺君がいるのかわからない。
額に手をあてておぼろげな記憶をたどっていると、彼はため息をついてその場に座り込む。
「ビールを飲みすぎて真っ直ぐ歩けない状態だったので、タクシーを呼んで家まで送りました」