あなたに夢中

サプライズ・サプライズ

翌日の午後三時前。
自宅マンションの前で渡辺君が姿を現すのを今か今かと待ちわびていると、一台の車が目の前に停まる。
もしかして……。
そう思った次の瞬間、ピカピカに磨き上げられた黒い車の左ドアが開き、中から爽やかな笑みを浮かべた渡辺君が出てきた。

「お待たせしました」

まさか車で迎えにきてくれるとは思ってもおらず、呆然としてその場に立ち尽くす。
そんな私の様子がおもしろかったようだ。彼は小さな笑い声を漏らして右のドアを開ける。

「さあ、どうぞ」
「あ、ありがとう」

ハッと我に返り、スマートなエスコートに従って助手席に乗り込んだ。
黒の皮張りのシートは座り心地がよく足もとも広々していて、無知な私でもこの車が高級外車だとわかる。
物珍しげに車内を見回していると、運転席に回り込こんだ渡辺君が車を静かに発進させた。

「運転はよくするの？」
「学生の頃はよくドライブしていましたね。最近はあまり運転できてないですけど、無茶はしないので安心してください」
「うん」

初めて聞く話に耳を傾けながら、端整な横顔を見つめる。
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