あなたに夢中
NAOKI推しになったきっかけを話し終えたタイミングで、信号が青に変わる。
「今度NAOKIに会ったら、よろしく伝えてね」
車を発進させた渡辺君に向かってお願いをしたものの、彼は前方を向いたまま眉をひそめる。
「……それはどうかな」
「えっ?」
「正直言うと、佳乃さんが直輝のファンだと知って嫉妬しました」
ライブ前にも『ただの嫉妬です』と言っていたと思い出す。
なぜ弟のNAOKIに嫉妬しなければならないのかわからず、車を走らせる渡辺君の横顔を見つめる。
「嫉妬って……どうして?」
「佳乃さんのことが好きだからに決まっているでしょ」
車内に響いた衝撃的な言葉に息を呑んだ私に、彼は一瞬だけ視線を向けて話を続ける。
「実は俺、入社してすぐに佳乃さんのことが気になっていたんです」
「う、嘘でしょ?」
影が薄い私を気に留める人などいるはずない。
自分が思った以上に大きな声が出てしまい、慌てて口に手をあてる。
「本当ですよ。俺を特別扱いしなかったのは佳乃さんだけだったので」
「それは渡辺君が社長の息子だって知らなかったからで……」
言葉に詰まる私を見て、渡辺君はクスクスと笑う。
「上司や先輩社員から変に気を遣われるのは、新人の俺にとってけっこうつらいものがあったんです。だから俺の正体を知らずに、ただの新入社員として接してくれた佳乃さんの存在は大きかったです」
「今度NAOKIに会ったら、よろしく伝えてね」
車を発進させた渡辺君に向かってお願いをしたものの、彼は前方を向いたまま眉をひそめる。
「……それはどうかな」
「えっ?」
「正直言うと、佳乃さんが直輝のファンだと知って嫉妬しました」
ライブ前にも『ただの嫉妬です』と言っていたと思い出す。
なぜ弟のNAOKIに嫉妬しなければならないのかわからず、車を走らせる渡辺君の横顔を見つめる。
「嫉妬って……どうして?」
「佳乃さんのことが好きだからに決まっているでしょ」
車内に響いた衝撃的な言葉に息を呑んだ私に、彼は一瞬だけ視線を向けて話を続ける。
「実は俺、入社してすぐに佳乃さんのことが気になっていたんです」
「う、嘘でしょ?」
影が薄い私を気に留める人などいるはずない。
自分が思った以上に大きな声が出てしまい、慌てて口に手をあてる。
「本当ですよ。俺を特別扱いしなかったのは佳乃さんだけだったので」
「それは渡辺君が社長の息子だって知らなかったからで……」
言葉に詰まる私を見て、渡辺君はクスクスと笑う。
「上司や先輩社員から変に気を遣われるのは、新人の俺にとってけっこうつらいものがあったんです。だから俺の正体を知らずに、ただの新入社員として接してくれた佳乃さんの存在は大きかったです」