此方は十六夜の蝶。
緋古那さんの優しさに比べたら、温かさに比べたら、私は醜すぎる。
「なにから食べようか」
「……かえり、ます」
「ひなあられ、食べる?ちょうどな季節だろうし、女の子の食べ物だね」
「っ、かえ、」
「大丈夫。…随分とひどいことを言ってしまったと、本人も反省してる。だから今日はウルに謝りたいんだってさ」
殺すって言われたの。
かつて命を救ってくれた人が、今度は殺すって。
私はそれほどまでに恨まれてしまった。
自覚はある。
軽率すぎることを言ってしまったのだから、怒らせてしまうのも無理はない。
でも、私がこんなにも悲しいのは。
あんなふうに抱きしめられてみたかった。
あんなふうに名前を呼ばれてみたかった。
そこに対して悲しんでいる自分が、どうしようもなく滑稽(こっけい)だから。