此方は十六夜の蝶。
「あの……、芸者さんたち、は…」
「必要ない」
赤い部屋。
一言で表すならば、そんな一室。
静寂に緊張して落ち着かないのであれば、三味線や琴の音を望みたくもなる部屋だった。
────が、彼が目的としていた場所はその先なのだと。
囲炉裏が置かれた隣、まだ襖があった。
悠々と開けられれば……私は息を飲む。
1枚の布団に、枕がふたつ。
「この前は言いすぎた。…悪かった」
ふわっと、布団の上に座ったのは水月さん。
横抱きにしながら膝に乗せられ、触れあった髪に心臓が一瞬にして掴まれる。
「わ、私も……、すみませんでした…」
あなたの前でも、緋古那さんの前でも、あのようなことは2度と言わない。
それを謝りたかったから私は今日、来たというのもあった。