此方は十六夜の蝶。
「…おまえのことは、いつだって心配に思っていた」
ぎゅっと、思わず彼の襟を掴む。
この着物も水月さんのものだよ。
あの頃のあなたが着ていたもの。
緋古那さんは優しいから、それさえ許してくれてしまった。
『…こうして抱きしめたくてたまらなかった。ずっと、俺はおまえのことしか』
まったく、ちがう。
私に贈られた言葉と、彼女に贈っていた言葉は。
二分金1枚で困惑している私と、大判の束を手にして足りないと言っているあなたくらいには。
「今日はおまえに……尋ねたいことがあるんだ」
「たずねたいこと…?」
「ああ。───…鷹という男のことを教えて欲しい」
どうして……?
どうしてあなたが鷹のことを知っているの?そして、知りたいの?
鷹とキツネさんは知り合いだったの……?