此方は十六夜の蝶。
覆い被さるわけではなく、隣に一緒に横になった水月さん。
そうしたほうが身体に腕を回せると、誘い文句まで。
「ここにくる前は、ちゃんと銭湯……、行ってます…」
「……ふっ」
耳元、火傷をもしてしまいそうな微笑が含まれた吐息。
前のような失態は冒さないし、私なりに清潔であろうとはしている。
鷹がいなくなってからの生活は、逆に潤ってしまった私だった。
「あっ、耳……、なんか、ぞわぞわ、します…」
「…性感帯のひとつだからな。……おまえは背中も弱そうだ」
「ひゃあ…っ!」
触れられただけ。
着物の上から指で、なぞられただけ。
それがどうしてお腹の奥がくすぐったくなるの。
「もっと近づいてくれるか。…おまえに触れたい」
「あっ…、わ……、っ」
着物同士が擦れる音に、遠くから聞こえてくる三味線や琴。
私が身体を寄せなくとも引き寄せられて、彼自らが腕まで回してくれる。