此方は十六夜の蝶。
「なんか……嫌だったんだよ。オレが知らない話されたの」
「…うん」
「オレとウルは家族だろ?これからもずっと……一緒だろ?」
「…うん」
「オレがいちばん?」
「…いちばん」
「今日もお魚取ってきてくれてありがとう」と、素直に伝える。
鷹がいるから私は寂しくないし、こうして生きていられるんだよ、と。
「がんばって金貯めて、いつか静かな町に一緒に行こうな」
「うん」
「ここは黒船とか言ってるし、将軍様もよくわかんねーし、ウルには悪いモンばっかだ」
「…うん」
この町はいろんな音がありすぎるから、心に平穏がない。
もっと静かでのどかな場所で一緒に暮らそう。
その一心で暮らしてきた。
正直いえば毎日の生活を乗り越えるだけで精いっぱいだけれど、目標があるだけ違う。
「それと…ウル。もしオレのことで知らない誰かが尋ねてきたとしても……“そんなやつ知らない”って言えよ」
「…急にどうしたの?」
「いいから。わかったか?」
「……わかった」