此方は十六夜の蝶。
「なんのために…、あなたはそんなことをするの……?」
変わらない狐の面。
当時と背丈が伸びて声が変わったのは私と同じ。
あの頃の私たちは、今の私たちをどんな顔をして見るのだろう。
そうして彼の右手が、ゆっくりと面を外す。
「………水月……さん…」
もう嬉しさは、そんなにない。
逆に“どうしてあなたなの”とまで思ってしまっている始末だ。
「…教えて欲しいんだ。鷹のことを」
「っ、もう私が教えられることなんかないです……!」
「どこで出会い、それまで彼が何をしていたのか。…ひとを殺したと言っていたが、明確には誰を殺した?知ってるだろう、お前は」
だったらどうしてそこまであなたが鷹を知ろうとしているのかを、まずは私に教えることが筋ではないの。
キツネさんにこれ以上失望したくない。
きれいな、だいすきな思い出のままでいて欲しかった。