此方は十六夜の蝶。
「…あなたのことを、私に先に教えてください。そうしたら……教えます」
「……好きな女がいる。その女の弟が、鷹だ」
「……!」
似ていると思ったんだ。
あの日、彼女を初めて見たとき。
思わず名前を呼びそうになった。
須磨さんが鷹のお姉さんだというなら納得はできるけれど、どうしてあなたがそこまでとも思ってしまう。
「…須磨に鷹を会わせてやりたい。俺にはそれくらいしか、できない」
「……鷹と出会ったのは、12歳の頃です。彼はそこまで自分の家族の話はしなかったけれど…、一家心中で生き残ったことだけは私も知っています。鷹との生活は───」
貧乏人が金で買った夢の代償が、これか。
鷹の幸せを、須磨さんの喜びを、あなたの望みを。
私は苦しいだけだ。
緋古那さん、とてもひどいことを言います。
私はとてつもなくあなたに会いたいです───。