此方は十六夜の蝶。
「鷹……?」
いや、違った。
似たような子が川原で遊んでいるだけだった。
気分を変えようと外の空気を吸いにいったある日の帰り道、私はつい足を止めてしまう。
「…鷹に会いたいってひと、いるよ」
ポツリと、つぶやく。
鷹は私がキツネさんの話をしたとき、つまらなさそうに拗ねてしまっていたけれど。
あれね、本当はキツネさんの目的は鷹だったんだって。
鷹のこと、ちゃんと大切に思ってくれている人はいるんだよ。
私のほうがそんなひと、いないよ。
疑心暗鬼になる。
もしかしたら緋古那さんもそうなんじゃないかって。
『…おまえのことは、いつだって心配に思っていた』
キツネさんは、そんなこと言わない。
あの人はすごく不器用なひとだから、直接的には言わないの。