此方は十六夜の蝶。
『これ、きみに似合いそうだと思ってさ』
『…耳飾り?』
『どう?なかなか洒落てるだろ?』
初めて友から渡された贈り物に、自分も何かお返しはできないかと八尋は考える。
………そうだ。
少し前に商店街を回ったとき、彼女にあげようと購入した簪があった。
もしかすると寅威のほうが似合うかもしれない。
あの子は髪の毛が短かったりするから。
『……蝶?』
『気に入らなかったら捨ててくれていい』
『どうしてそうなるんだよ、きみって奴は。…八尋にしては珍しいなと思っただけ。ただ、男に簪ってのは似合うものなのかな』
『…似合うと思ったから、俺はおまえに贈ったんだ』
『ふ、素直なんだか素直じゃないんだか。
…ありがとう。大切にするよ』