此方は十六夜の蝶。
私なんか3年いっしょに暮らしていただけ。
1枚の布団で身体を寄せあって眠っていたこと、鷹は魚を煮込んだ鍋が好きだったこと。
そんなの須磨さんも知っているんじゃないの。
「私っ、もう…っ、お金持ってるから……!」
いっそ壊れてしまえ、なんて思いで姿を現して、また飛び出す。
足音の時点で迎え出たため、彼はまだ握り飯を自分で持っているままだった。
「この小判は緋古那さんのものでもないです…!自分でっ、自分でちゃんと稼ぎました……!」
すこし前、道案内したときのお礼として渡された1両。
見せつけるように、私は狐面の彼へと。
「もうあなたの手を煩わせることもないしっ、こっちだって迷惑なんです……!!」
もう2度と来ないで。
あなたに来てもらえて幸せだったときは、5年前で終わっているの。