此方は十六夜の蝶。
あのとき私はまだ子供で、色気より食い気だったから成り立っていたのだろうけれど。
いまは無駄な欲が出てしまってだめ。
あなたに会いたくない、いっさい、会いたくない。
「キツネさんなんか大っ嫌い……!!こんな着物だっていらない…っ!!」
投げつけた、柘榴と朱殷。
その反動で彼が手にしていた握り飯さえ、地面に落っこちた。
「あのときだってっ、私なんか餓死していれば良かった……っ」
助けてくれなくてよかった。
そうしたら、鷹とも出会わなかった。
鷹が盗賊になることなんかなかったし、住む世界が違う場所で何度も何度も惨めな思いをしなくて済んだ。
笑えるでしょう。
吉原で好いた男性に布団の上に倒されて、銭湯で身体を洗ってきたことを知らせる女だなんて。
改めて考えると馬鹿じゃないの。
恥ずかしいことばかりして、もう、ばかみたい。