此方は十六夜の蝶。
「今日おまえを呼んだのはさ、……本題はここから」
「…なんだ」
「“鷹”という名前をした男とウルは知り合いだよ」
「っ!!!」
「…今は少し離れているらしいけど、ずっと一緒に暮らしていたと」
おまえがずっとずっと探していた男の名前だ。
おまえの愛する女が探していた弟だ。
これを聞いたとき、俺はまず保身に走ったからこんな姑息なことを言ったんだろう。
「……おねがいだ水月。もう少しだけ“俺”のふり、しててよ」
「…ずるいな、おまえは。この情報の対価というわけか」
「そう。これで水月が“キツネさん”になってまでウルに近づく私情も作れたろ?…つめたく突き放してくれていい。女は突き放されると追いたくなるものだからね」
本当はいつも心配だった。
握り飯ひとつで足りるだろうかと、一緒に暮らし始めた男は信頼できる奴だろうかと。
吉原に売らせたくはなかったから、髪を切ってわざと男に見立てた。
そんなことを言ったら馬鹿げていると笑うかな。