此方は十六夜の蝶。
「…ゆっくりしよう。今はなにも考えないで、ゆっくりすればいいよ鷹」
畑を耕してもらおうかな。
家の掃除もしてもらおうかな。
戸に穴が空いてしまっていたから、直してもらおう。
その日は前のように一緒に、1枚の布団の上で身体を寄せ合って眠った。
「はっ、はあ……、失礼する」
「だっ、誰だよおまえ……!!」
そして数日後のこと。
鷹の具合もすっかりと治り、私は頃合いを見計らって筆を取ったのだ。
私から送った1通の手紙を受け取ったある人が、珍しいほど息を切らしてやってきた。
顔を見られないよう覆った男性が私たちの家に。
「不審者だろこいつ……!!ひとん家に勝手に上がってくんなよ…!」
「大丈夫だよ鷹。この人は悪い人じゃないの」
「えっ、ウル、おまえの知り合いなのか…?」
「…うん」
戸をそっと閉めて、狭いなかでも彼に腰を下ろさせる。
鷹は私の背中に隠れながら警戒心を露にしていた。