此方は十六夜の蝶。
「腹を空かせているのかい」
明日は我が身。
そう思ってうつろうつろに目を伏せていると、見下ろしてくる影ができた。
いつの間にか辺りは暗くなっている。
「…おめぐみ……を」
「そうしてやりたいのは山々なんだけれど、俺もこの握り飯ひとつしか持っていなくてさ」
「……ああ…、そう、ですか…」
こういう人間は、多々といた。
乞食である私の前にわざと食べ物を見せびらかしにやって来ては、目の前で鼻高々にむしゃぶりつく。
一種の嫌がらせだ。
「だから半分こして一緒に食べようか」
「……え…」
「俺は不器用だから、きれいに真っ二つできるか分からないんだけど」
よっこらせ、と。
私の隣に座ってきた彼の風貌を、初めて見た。
声質からして元服しているかしていないかほどだとは分かったが、なんせおかしなお面をつけている。