此方は十六夜の蝶。
「…翔藍、右京。ウルのことを頼んだよ」
「はい」と、揃った振袖新造たちの声。
ふるふるとこぼれ落ちそうな私を見て、なんとも言えない切なそうな表情で部屋を出ていった緋古那さん。
金で恋を買い、金で時間を買い、金で寂しさを埋める媚薬を買う。
そこに心が生まれれば生まれるほど、苦しくなるんだ。
「ウル様、必ず緋古那さんは戻ってきてくださいます。それまで俺たちと一緒に花札でもしましょうか?」
「……はい…」
「笑ってください、ウル様。緋古那さんもあなたの笑顔が好きだと言っておられました」
ぎこちなく笑ったつもりが、油断したならば今にも崩れ落ちそうだった。
そんな私に、ふたりの同年代たちは音や舞を止めてまで目線を合わせてきた。
「緋古那さんはいつも、あなたの話を俺たちに聞かせてくださるんですよ」
「わたしの……?」
「ええ。ウル様がいないときは、ウル様のお話ばかりです」