此方は十六夜の蝶。
そんなことを聞いたら余計に会いたくなってしまう。
いつ頃戻ってきますか?
相手の女性は頻繁にいらっしゃるのですか?
聞いては困らせての繰り返し。
水月さん。
私はとっくに、女になっていたようなのです。
そしてしばらくすると、襖がゆっくり開けられる。
「緋古那さ───、…あの、緋古那さんは……」
しかしそこにいたのは、彼の付添人である老婆がひとり。
「…申し訳ございませぬ、ウル様。今宵、緋古那殿は風見姫様とお過ごしになられると」
「い、一夜を共にするということ…ですか…?」
「……左様にございます」
私は選ばれなかったということ。
つまりそれは、差し出した額に私は負けたのだ。
手持ちの銭賃ではやはりダメだった。
断らなかった緋古那さんに腹を立てたって仕方ないというのに。
でも、ほらね。
やっぱり、やっぱり、お金がすべてではないですか。
金をつぎ込まなければあなたとの時間は買えない。